実需が支配する米ドルレートその１

FXの相場分析には時折、実需、または実需筋という言葉が登場します。この実需という言葉は、米ドルという通貨の性質に深く関わっているものなので解説しておきましょう。

実需は、言葉の意味だけを比較するとFXとは対極の関係にあります。

FXでトレードをしている人が自問自答するとすぐに答えが出ると思いますが、例えばドル円の買いポジションを建てている人は、近い時期に米ドルを必要としているでしょうか？
そんなことはありませんね。答えはNoです。

ドル円の値上がりを期待して買いポジションを保有しているだけで、思惑通りに米ドルの価値が上昇して利益が獲得できることが分かれば、それを手放して再び日本円に戻します。結果として日本円の資産が増やすことが、最終的な目的です。

このような投資のことを、相場の世界では投機といいます。

実需は投機の反対語にあたる言葉で、本当にその通貨を必要としているという意味です。米ドルの実需とは、何か代金の支払いのために米ドルを必要としている企業などが自国通貨を売って、米ドルを買うという取引を行ないます。

米ドルは世界の基軸通貨なので、国際間の代金決済で頻繁に使われています。そのため実需による取引も活発で、それがFXの適用レートに影響を与えることもあるのです。

米ドルの相場分析で実需を無視できないのは、この実需がとても大きな規模だからです。

具体的にどんな企業が実需筋となっているかというと、ドル円の場合は輸出企業、輸入企業です。
輸出企業は世界中で自社製品を販売し、そこで得られた米ドルを日本円に両替する必要があるので、ドル円の売りが発生します。反対に輸入企業は世界中から製品を輸入する際に米ドルで支払う必要があるので、ドル円の買いが発生します。

こうした実需筋がどの日に両替をするかというのが、FXのトレードに影響を与えるというわけです。誤解のないようにお断りをしておきますが、レバレッジを利かせることができるFXの場合は取引高が大きくなりやすく、アッと言う間に実需筋の取引額を上回るほどのパワーを持っています。

そのため、相場に与える影響は投機筋のほうが大きいのですが、実需筋はこうした相場の動きに関係なく必要なしかるべき時期に両替を行なうので、こうした投機筋から材料視されているというのが、実際のところです。

実需筋はほとんどが大企業なので、経理処理の都合で両替をする日がある程度決まっています。その日に合わせて実需筋と同じ投資行動を取れば、動意をつかめる可能性があるわけです。

これについては、次回にさらに詳しく解説します。